Android デバイス&OS

Android 9 Pieが発表&配信開始。アップデート内容や提供時期まとめ

8月7日にAndroidの新バージョンとなる「Android 9 Pie」が正式発表されています。

2週間も前のことなので何をいまさらという感じもしますが、私自身が内容を整理したかったのでこの記事にまとめました。

バージョンとコードネーム

Android 9 PieはAndroid 8.0/8.1 Oreoに次ぐバージョンです。3月にAndroid Pがリリースされていますが、これは正式版が登場するまでの仮の名前。つまりAndroid Pの正式版が今回リリースされた「Android 9 Pie」ということになります。

バージョン番号に続く英単語はそのバージョンのコードネーム、要は愛称みたいなものです。Android 9ではシンプルに「Pie」というコードネームが付けられました。

2008年にリリースされた最も初期のAndroidは、バージョン番号が1.0で、コードネームは「Apple Pie」だったといいます。Apple Pieが10年経ってPieになったわけですが、もしかするとこれには、AndroidがもはやApple(iPhone)の存在を必要としないほどに大きく成長したというGoogleからのメッセージが込められているのかもしれません。

ちなみにバージョン番号も今回から「9」とシンプルな形になっています。これまでは「7.0」や「8.0」という形でした。確かにAndroid 9という大きな枠の中に9.0や9.1といった小分けのバージョンが含まれているという形の方が、マーケティングやブランディングの面では都合が良さそうですし、ユーザーからしても分かりやすくて良いです。

アップデート内容

Android 9の特徴は何と言ってもAI(人工知能)を使ったインテリジェント機能の搭載です。AIが持つ機械学習という能力を使ってユーザーの行動やスマホの使い方を学習し、それをもとに適当な情報を提供したり、設定を最適化したりしてくれます。

具体的な機能としては、よく使うアプリやサービスに優先的にバッテリー容量を割り当てることで電池持ちを良くする「Adaptive Battery」、画面の明るさをユーザーの好みや利用シーンに応じて自動調整する「Adaptive Brightness」、ユーザーの次の行動を予測して必要と思われる機能を提案する「App Action」などがあります。

また、スマホやタブレットの使いすぎが社会問題化していますが、Googleは対応策として「Digital Wellbeing(デジタルウェルビーイング)」という概念を新しく導入しました。Googleはこれを「テクノロジーと適したバランスを見い出すためのもの」としています。

Digital Wellbeingは、スマホをどのように使っているかがわかる「Dashboard」や、指定アプリの利用時間を制限する「App Timer」、画面上に表示される通知をすべてミュートする「Do Not Disturb」、寝る前に画面をモノクロにする「Wind Down」などの機能で構成されています。

なお似たような機能は次期iOS(iPhone等に搭載されているAppleのモバイルOS/iOS12)にも追加される予定となっています。

ナビゲーションシステムにも大きなテコ入れが入ります。これまで標準的なAndroid端末では「ホーム」「戻る」「アプリ履歴」の3ボタンで構成されていましたが、Android 9 Pieではホームボタンひとつのみとなります。戻るボタンは廃止されたわけではなく、必要なときのみ表示される形になりました。

ホーム画面でホームボタンを上にスワイプすると、これまでのアプリ履歴画面に相当する「オーバービュー」と呼ばれるモードになり、使用中のアプリのサムネイル画像が横並びで表示されます。サムネイルをタップするとそのアプリが全画面で表示されます。

オーバービューの状態でさらに上にスワイプするとすべてのアプリが表示されます。アプリ一覧画面がこのような表示方法になったため、ホーム画面からはいわゆるドロワーアイコンが削除されています。

iPhone XでAppleが採用したUIととても良く似ていますが、Googleは今回の変更を「片手での操作性を良くするため」と説明しています。Androidスマホでは、縦横比が18:9など、これまでよりも縦に長いディスプレイを搭載する機種が増えてきています。

このほか、Google検索から各アプリの主要機能にダイレクトにアクセス可能とする「Slices」や、スクリーンショットを撮ったら通知からすぐに編集できるようにする機能、音量調整の簡略化、新しい画面回転システムの追加、複眼カメラへの対応、ディスプレイの切り欠きへの対応、画像フォーマット「HEIF」のサポート、屋内測位(Wi-Fi RTT)への対応、オートフィル(自動入力)機能の改善、セキュリティー機能の改善などが行われています。

なお、ここに記したのは概要であって、さらに細かな機能追加や改善が含まれています。英語であったり技術者向けの内容だったりするのですが、Googleが公開しているノートをあわせて読むとより深く理解できるはずです。

提供状況と今後のスケジュール

Android 9 Pieの発表と同時に、Google Pixel、Pixel XL、Pixel 2、Pixel 2 XL、Essential Phone PH-1へのOTAアップデートが開始されています。

いずれもMVNOを含めて国内の携帯会社からは発売されていないので一般の人がAndroid 9 Pieを使うのは少しむずかしい状況なのですが、唯一Essential Phone PH-1は公式サイトで日本からの購入が可能なうえ、技適の問題もクリアしているので、現時点でAndroid 9 Pieを実機で試すのにベストな選択と言えます。

ただし、Digital Wellbeingの機能だけはいまのところPixelシリーズに対してのみβ版として提供されていて、その他の機種には年末までに正式版が提供される予定となっているので、それまではEssential Phone PH-1では試すことができません。

Android 9 Pieのこの他の機種への提供については現在、端末メーカーが対象機種や提供スケジュールを各自発表しているところです。たとえばソニーは最新モデルを中心に9月より提供を開始する旨を発表していますし、ほかにもMotorolaやNokia、Xiaomi、Oppo、Vivo、OnePlusといったメーカーが秋からの提供を予定しています。ただしいずれもグローバル市場に向けた発表であって国内モデルには言及していないので、実際のところ提供時期についてはっきりとしたことは何もわからない状態です。もちろんシャープやHuawei、ASUS、Samsung、LGなど他のメーカーの機種にもアップデートが提供されることでしょう。しかしやはりその時期は不明です。

一応Googleの日本市場向けの発表によれば、今年の秋までに対象のAndroid One端末へのアップデートを予定しているとのことです。ですからAndroid One端末にはいち早く提供されることが予想されます。

また、端末メーカーと協力して新機種の追加にも取り組んでいるとのことなので、国内では今年の秋冬商戦でAndroid 9を搭載した機種がいくつか登場することになると思います。

関連リンク:Google Japan Blog